[ニューヨーク 16日 ロイター] - シリコンバレー銀行とシグネチャー・バンクの経営破綻を受け、米連邦準備理事会(FRB)の金融機関への資金供給制度の利用額が過去最高を更新したことが16日公表の統計で分かった。銀行が担保として差し入れる国債などによってバランスシートは拡大し、保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)にブレーキがかかった。
連銀窓口貸出(ディスカウント・ウインドウ)の利用額は15日までの1週間で1529億ドルとなり、金融危機が最も深刻化した2008年秋に付けたこれまでの最高額である1120億ドルを上回った。FRBが新設した銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の利用額は119億ドルに上った。
BTFPは米国債や住宅ローン担保証券(MBS)など適格担保を額面で評価して最長1年の貸し出しを行う制度。
シリコンバレー銀とシグネチャー・バンクの業務を継承したブリッジバンクに対する1400億ドル超の資金供給も含め、FRBのバランスシートは過去1週間で約3000億ドル増の約8兆7000億ドルと、昨年11月以来の高水準になった。昨年夏以降、9兆ドル弱あったバランスシートを縮小してきたが、一部が帳消しとなった。
ジェフリーズのマネーマーケット・エコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は資金供給制度の利用状況について「一握りの銀行の特殊事例という見方に整合的な数字だ」と分析。「システム全体に関わるような大きな問題ではない」と述べた。
連銀窓口貸出の利用額が過去最高に上ったことは多くのアナリストにとって意外だったが、利用急増をプラスと見る向きもある。同制度を利用すれば他の市場参加者に問題を抱えていると知らせることになるとの懸念から、長い間敬遠されてきた経緯があり、FRBがこのスティグマ(偏見)払拭に努めてきたからだ。
FRBのバランスシートの拡大についてLHマイヤーのデレク・タン氏は、制度的「欠陥」ではなく特徴と見なすべきだと指摘。「FRBは今後もインフレ抑制の利上げを継続できるし、膨らんだバランスシートによって保有債券の売却を続けられるようになり、圧縮の取り組みを完全に停止することは避けられる」と指摘した。
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