全国農業協同組合連合会(JA全農)は27日、2023年11月〜24年5月の国内の地方組織向けの肥料販売価格を発表した。主要製品については前期(23年6月〜10月)に比べ最大で1割程度値下げした。下落は2期連続。肥料の原料について、ロシアや中国からの供給が比較的安定し、国際相場が下がったことを反映した。
窒素、リン酸、カリウムが肥料の三要素とされる。JAグループは、これらの成分を含む化学肥料について、国内流通量の7割を握っている。JA全農が原料調達や製品流通を担う。6月と11月の年2回発表する半期ごとの販売価格が国内市場の指標となる。
主要な肥料としては、塩化カリウムを前期比で12.7%下げた。窒素を含む尿素は輸入品を1.2%、国産品を5.8%安くした。複数の成分を含む高度化成肥料(基準品)も7.6%下げた。
一方、リン酸を含む過石は価格を据え置いた。原料であるリン鉱石は電気自動車(EV)のバッテリー向けの引き合いが強く、価格が高止まりしているためだ。
世界銀行が算出する9月の肥料価格指数(2010年=100)は158。22年4月の最高値である294から低下傾向にある。国際相場の下げが、日本国内の多くの肥料価格に波及した。
日本は肥料の原料の大半を海外から調達している。特に尿素ではマレーシア、リン酸やカリウムを含む原料では中国やカナダの依存度が高い。ロシアや中国は世界の主要な原料生産地として存在感がある。
ロシアがウクライナに侵攻した22年以降、世界的な供給が細るとの懸念が強まった。中国も21年に肥料原料の輸出検査を厳格化したことから、自国での消費を優先する姿勢を強めるとの見方が広がった。ロシアや中国を起点とする供給懸念が肥料の国際相場を押し上げていた。
足元では「問題なく肥料原料が入手できている」(JA全農)という。世界的にも安定供給に対する過度の不安が後退し、国際価格も落ち着いた格好だ。
ただ肥料の価格水準は依然高い。JA全農の尿素(輸入品)は騰勢を強める前の21年11月〜22年5月と比較すると11%高い。塩化カリウムも15%上昇している。世界的な人口増で肥料需要は増加し続ける見通し。価格が今後大幅に下がる見込みは薄い。
個人農家の営農費における肥料の比率は7%程度。コメで9%、イモ類なども13%を占める。肥料コストが農家の経営を圧迫しかねない状況にある。食料安全保障の観点からも、肥料を低価格で安定して確保できるしくみ作りが欠かせない。
JA全農は肥料原料の調達先の多様化を進める。リン酸を含むりん安ではモロッコ、塩化カリウムはカナダからの輸入を増やした。今後は調達量を増やしてより安くすることが課題となる。
化学肥料の代わりに国内でまかなうことのできる堆肥の活用も重要となる。農林水産省は食料の生産力向上と持続性の両立を目指した「みどりの食料システム戦略」で、化学肥料の使用量を50年までに30%削減する目標を掲げている。
(沢隼、杵渕純平)
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