政府が、戦闘機など重要な防衛装備品のサプライチェーン(供給網)強化のため検討している法整備で、部品調達先に海外のリスクがある事業者には調達先の変更命令を出すなどの措置を検討していることが19日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。政府は来年末にかけて、法整備を含めた防衛生産態勢強化策を策定する方針だ。防衛省は令和4年度予算案に約22億円を計上し、支援策を本格化させる。
政府が検討している防衛産業維持強化法案は、戦闘機や潜水艦など重要装備品の中でも1社だけが製造している特注品を対象とし、汎用品は外す。製造者に供給網調査への協力を義務付け、協力しない場合には罰則の導入も検討する。
調査の結果、供給断絶の恐れがある他国から部品を調達するリスクがある場合には調達先を変更するよう命令できる。また、製造者が事業から撤退するリスクがある場合は、事業継承先へ供給協力を要請できる。
法案は多様な産業を対象とする経済安保推進法案(仮称)の「防衛版」とも位置付けられる。ただ、防衛は他の産業より高いレベルでの供給網の確保や機密漏洩の防止が求められ、防衛省はかねて主要装備品の供給網調査や、システム調達先のセキュリティー強化策などに取り組んできた。同省幹部は「日本防衛という明確な目的の下で対策を行ってきた」と語り、経済安保とは別枠と強調する。
一方、防衛産業はこれまでも基盤の脆弱さが問題視されてきた。防衛装備庁の調査では、受注企業の売上総額に占める防衛関連売り上げの割合は平均3%以下。艦船などを手がける三菱重工でも約10%などと他国の軍需企業と比べて圧倒的に低い水準だ。
政府は規制強化を検討しつつ、来年度から防衛装備庁内に「防衛産業政策室(仮称)」を新設し、支援策を本格的にスタートさせる。4年度当初予算案には、先端技術による製造効率化6億円▽米軍装備品への参画支援5億円▽中小企業のサイバーセキュリティー設備導入8億円-など計約22億円を計上。防衛省としては初めて本格的な産業支援策を展開する。
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