Pages

Thursday, April 6, 2023

2040年、救急受け入れ拒否 労働供給制約社会に待つ地獄絵図 - 日経ビジネスオンライン

(写真:Shutterstock)

(写真:Shutterstock)

 17年後の2040年、この日本という国で、「私」はどのように生きていけばいいのだろうか。

 と、遠い未来の話なのか、ちょっと先の話なのか、イメージしづらい入り方になってしまったけど、まずは先週話題になった「2040年の日本の姿」から。

労働供給制約社会とは、日常生活のバランスが崩れること

 リクルートワークス研究所が「労働供給制約」(=生活を維持するために必要な労働力を供給できない状態)という、日本社会が今後直面する社会問題に、警鐘を鳴らす目的で、未来予測を行ったところ、企業などで働く担い手不足が、40年には全国で1100万人余りにのぼることが分かった(以下、リクルートワークス研究所「未来予測2040」、https://www.works-i.com/research/works-report/item/forecast2040.pdf、より)。

 最も労働供給不足になるのが、介護職員や訪問介護などの「介護サービス」で、30年には21万人、40年には倍以上の58万人の供給不足になると推定された。40年の労働需要(229.7万人)に対する不足率は25.3%。「週4日必要なデイサービスがスタッフ不足で3日しか受けられない」という状況が標準的になるという。

 次いで不足率が大きいのが「商品販売」で24.8%。小売店は無人化を余儀なくされる。「輸送・機械運転・運搬」を担うドライバー不足も深刻で、40年の労働需要(413.2万人)に対する不足率は24.2%。「4人必要な仕事に3人しかいない」状況だ。

 また、「建設」の不足率は22%。道路のメンテナンスや災害時の復旧に手が回らず、必要なインフラが使えないままになる可能性が高い。

 さらに、超高齢社会に必要不可欠な医師・看護師・薬剤師などの「保健医療専門職」の不足率は17.5%で、病気になっても診察を受けるのが難しくなり、救急車を呼んでも受け入れる病院がない事態が想定されるそうだ。

 どれもこれもなんとなく分かっていたことではある。
 しかし、今回の調査で「私たちの生活に密接に関係している職種」に着目し分析したことで、17年後の日本の“日常”がより具体的になった。

 介護現場はすでに問題山積なので、「4日のデイサービスが3日」になると聞いてもさほどの衝撃はない。しかし、救急車で運ばれても入れる病院がない状況は、新型コロナウイルス禍の異状は“前触れ”にすぎず助けられる命が助けられなくなる“日常”がすぐそこにせまっていることを意味している。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り5074文字 / 全文6180文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 2040年、救急受け入れ拒否 労働供給制約社会に待つ地獄絵図 - 日経ビジネスオンライン )
https://ift.tt/AN69eUK

No comments:

Post a Comment