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Wednesday, October 27, 2021

欧州のガス高騰 安定供給の道筋どう付けるか - 読売新聞

 欧州で天然ガスの価格が高騰し、欧州連合(EU)が対応を迫られる事態となっている。安定供給の確保に向けて、EU各国は協調体制を強化しなければならない。

 欧州の天然ガスの価格は、今年初めの5倍超に値上がりした。コロナ禍からの景気回復に伴い、エネルギー需要が高まったのに加え、欧州では今夏、風が弱かったために風力発電による電力供給が減ったことが大きい。

 EUは首脳会議で、緊急対策として、各国政府に低所得者層や中小企業への補助金支給などの支援を行うよう求めた。欧州ではガスを使った暖房が主流で、冬に備えた対策は不可欠だ。

 中長期的対策としては、天然ガスの価格安定に向け、EU加盟国による共同購入を検討することを決めた。不足時に融通し合えるよう、備蓄に関するルールの策定についても今後協議するという。

 今回浮き彫りになったのは、EUが、政治的に対立するロシアに天然ガスの確保を依存している構造の もろ さだ。ロシアからの輸入は、総輸入量の3割を超えている。

 フォンデアライエン欧州委員長は、ロシアが供給増に柔軟に応じようとしないことへの不満を表明した。欧州議会からロシアによる意図的な価格操作を疑う声まで出たのは強い不信の表れだろう。

 だが、ロシアとの距離感を巡っては、EU内でも温度差がある。ドイツはロシア産天然ガスを輸送するパイプラインを増設する一方、東欧諸国では、ロシアが欧州のエネルギー供給で影響力を増大することへの警戒感が強い。

 エネルギーは各国の安全保障の一環であり、国益とも深くかかわる。EUとして政策を一本化することは容易ではあるまい。

 気候変動への取り組みとエネルギーの安定供給を両立させることも、EUが直面する課題だ。

 EUは温室効果ガスの排出権取引制度をいち早く実施し、風力・太陽光など再生可能エネルギーによる発電を急速に拡大している。脱炭素の世界的潮流を先導してきた実績は評価できる。

 ただ、今回示されたように再生エネによる発電は依然不安定だ。再生エネ技術が進展するまで、化石燃料による補完が必要だろう。二酸化炭素の排出量が比較的少ない天然ガスの役割は大きい。

 EUが再生エネ拡大と化石燃料離れを急いだことが混乱を招いた側面もある。国民生活に悪影響を与えれば、脱炭素政策の推進が揺らぐことを忘れてはなるまい。

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