~データ分析により最適な養殖環境をマニュアル化し、持続可能なスマート漁業を加速~
- 京都府舞鶴市
- 京都府漁業協同組合 舞鶴とり貝組合
- KDDI株式会社
- KDDIアジャイル開発センター株式会社
2023年8月24日
京都府舞鶴市(市長:鴨田 秋津、以下 舞鶴市)と京都府漁業協同組合 舞鶴とり貝組合(代表:川崎 芳彦)、KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)、KDDIアジャイル開発センター株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:木暮 圭一、以下 KDDIアジャイル開発センター)は、水産資源の安定供給および養殖環境構築のマニュアル化を目指し、IoTを活用した丹後とり貝のスマート漁業事業の実証(以下 本実証)を舞鶴湾で2023年7月18日から開始しました。
本実証では、約1年かけて育成(養殖)される丹後とり貝の海洋環境をIoTセンサーにより見える化し、水深ごとの環境情報や生育状況をデータ分析することで養殖に最適な環境を導き出します。
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<本実証の様子>
<舞鶴市の「丹後とり貝」>
養殖業は地域経済の成長をけん引する基幹産業である一方、漁業者の高齢化や後継者不足、知見の属人化などの課題があります。舞鶴市とKDDIは、2018年12月に地域活性化を目的とした連携協定を締結(注1)し、その取り組みの一環として、漁業における課題とICTを活用した解決策について協議してきました。
養殖業務においては年度によって豊凶の差があり、高水温・大雨による塩分低下などが関係していると言われていますが、その原因ははっきりしていませんでした。そこで、IoTセンサー機器で水深ごとの環境情報や生育状況を分析することで、データに基づき最適な養殖環境を把握します。養殖手法のマニュアル化により、業務の効率化、安定的な出荷、生産の増加、さらには産地づくりと担い手の育成、確保につなげます。
■「丹後とり貝」養殖の課題
「丹後とり貝」養殖の課題は、海洋環境の変化による出荷量のバラツキです。
養殖はアンスラサイト(注2)を敷いたコンテナに稚貝を入れ、海中に吊るし約1年かけて丁寧に育成します。丹後とり貝を育てる好適環境とされる水温、溶存酸素、塩分、クロロフィルは水深4m~7m位とされています。しかし、近年の気候変動に伴い、水温や水質が変化し、植物プランクトン量も変化するなど、現在の海洋環境は養殖技術の開発当初と比べて変化していることが想定されます。
夏期の高水温時に漁業環境は悪化しやすくなります。高水温、低塩分、貧酸素の環境下では、突然死する「へい死」が発生しやすいとされていますが、温度や濃度とへい死率などの育成状況の相関性のデータがないため、海洋環境の変化による出荷量の減少が課題でした。安定的な供給には、丹後とり貝の健康状態を把握する指標と、養殖場の水質環境のデータを取得・分析し実情を把握することが必要でした。
■本実証について
1. 海洋環境のデータの取得
稚貝の入ったコンテナを、水深3m、6m、9m、11m毎に沈め、海中へ設置した昇降機付のIoTセンサーで水深ごとの水温、溶存酸素、クロロフィル、塩分などの情報を1時間ごとに収集しクラウド上へ保存します。また、約20日に一度の頻度で水深ごとのコンテナ内のとり貝の殻長、へい死などの成育状況を取得し、クラウド上へ保存します。
2. データの分析
取得した環境データと育成結果の関連性を分析することで、「へい死率が低く成長率の高い環境」などデータに基づいた最適な養殖環境の把握が可能となります。
今後は、分析データをもとに養殖手法をマニュアル化し、丹後とり貝の最適な環境を養殖業者へ共有することで、養殖業の効率化と舞鶴市全体で養殖の増産を目指します。
<本実証のイメージ>
■各社の役割
舞鶴市、KDDI、KDDIアジャイル開発センターは今後もIoT/ICTを活用したスマート漁業事業を推進し、漁業の効率化や安定化、収益の増加へ貢献することで、地域産業の発展を目指します。
(参考)
■舞鶴市について
舞鶴市は、京都府の北東部を占め、京阪神から100km圏に位置します。若狭湾に湾口を開いた舞鶴港は、波静かな天然の良港を形成しており、京都の海の玄関口となっています。
また、山々の豊かな自然にも囲まれています。
「未来に希望がもてる活力あるまち・舞鶴」を目指し、最大の地域資源である「海・港」を生かした産業の振興、国内外とのさらなる人流・物流の拡大を図ることはもとより、全国に誇れる農林水産業や観光関連サービスなどの産業の高付加価値化、さらなるブランド力の向上を推し進めています。
<舞鶴市 地図>
■舞鶴市の「丹後とり貝」について
丹後とり貝は舞鶴湾・宮津湾・久美浜湾で漁業者が約1年かけて丁寧に育成(養殖)した、大型肉厚で柔らかく独特の甘みが特徴のトリガイです。
年度により豊凶の差が激しいため貴重で高価な貝とされています。安定的に供給するため、京都府農林水産技術センター海洋センターが全国に先がけて昭和50年代から養殖技術を開発しました。
「丹後とり貝」という地域ブランド名を与えられ、平成20年に公益社団法人京のふるさと産品協会が認証する「京のブランド産品」に水産物で初めて認証されました。
からの記事と詳細 ( IoTで可視化、舞鶴市「丹後とり貝」安定供給に向け実証 - news.kddi.com )
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