[新潟市/東京 15日 ロイター] - 13日閉幕した主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、インドなどの新興、途上国の閣僚を招き、債務問題への対処や脱炭素化に向けた供給網強化で連携をアピールした。19日からの首脳会合(広島サミット)に成果をつなげて囲い込みを図る狙いだが、具体策を描くのはこれからで、思惑通りに進むかは見通せない。
「国際的な諸課題を前に、G7がより結束することを確認できたことが大きな成果だ」。鈴木俊一財務相はG7閉幕後の記者会見で、議長国としての成果をこうアピールした。
今回のG7では、20カ国・地域(G20)議長国のインドに加え、韓国、シンガポール、インドネシア、ブラジル、コモロの閣僚も招く異例の対応を取った。招待国を「パートナー国」と位置付け、債務問題に加えてインフラ投資の拡大や供給網の多様化を進める狙いで、同行筋は「G7とパートナー国との間で、きわめて有意義で率直な意見が出された」と語る。
巨大経済圏構想「一帯一路」で途上国への融資を伸ばした中国は、アフリカを中心とする多くの国で債権比率がパリクラブを上回っているとされる。
債務問題では、債権国と債務国側からの申告データを照合したところ、双方の認識に65億ドルの開きがあることも新たに判明。中国国家開発銀行を念頭に、公的融資を民間部門に移して回収比率を下げる「飛ばしの手口」を封じる構え。
一方、脱炭素化に向けた供給網強化では、世界銀行などと協働して年末までに新たな枠組みを構築することで合意した。
再生エネルギーや電気自動車に関連する戦略物資を巡り、「グローバルサウス」と呼ばれる新興、途上国をG7が支援し、過度な中国依存を改める狙いがある。G7が世界銀行に資金を拠出することも視野に入れる。
表向きは「特定の国を念頭に置いているわけではない」(同行筋)とするが、専門家の間では「G7の議論は中立的立場のグローバルサウスと友好関係を築く政治的意図を伴い中国に向けられている」(野村総合研究所の木内登英氏)との見方が強い。
これらの成果をG7サミットにつなげ、今後の議論に弾みを付けたい考えだ。
もっとも具体策を描くのはこれからで、思惑通りに囲い込みが進められるかは見通せない。「新たな国際秩序に向けたグランドデザインは、なお描けていない」と、UBS証券の足立正道氏は語る。
そもそも米国の利上げが債務危機を招く一因となっているほか、利上げを続けざるを得ない背景には、対ロ制裁に伴うインフレ高進があるとされる。先進国主導の国際秩序に不満を抱える新興国もあるとされ、反発を招けばかえって先進国と新興国の対立を深めかねない。
コモロは、アフリカ55の国・地域が加盟する世界最大級の地域機関アフリカ連合(AU)の議長国で、日本が現職閣僚をG7に招聘(へい)した。ただ、フライトの都合で来日が取りやめとなり、元財務相のシャリフ大使が参加したという。
危機に陥ったスリランカの債務救済では、日本が主導して発足した債権国会合での協議にこぎ着けたが、最大の2国間債権を抱える中国はオブザーバー参加にとどまり、依然として着地点は見えない。西側諸国と距離を置く国も含め、連携を深められるかは今後の交渉にかかっている。
(山口貴也、梶本哲史 編集:橋本浩)
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